ライフハック

SF映画の滑稽さから学ぶ「きちんと相手に伝わるということの本質」とは

みなさんこんにちは。
内山です。

「伝えたはずなのにわかってくれていない」
「教えたはずなのに実行してくれない」

日常的によく体験することですが、これは

「あなたの伝えたいことが実は全く伝わっていない」

ということの証です。

「伝える」「伝わる」は全く違うものです。

電気を伝えたくてきちんとセットしたつもりでも、使っている媒体が木材では全く伝わらないのと同様です。

SF映画に見る滑稽さ

私の推している映画監督にリドリー・スコットという巨匠がいます。
出世作は超有名な「エイリアン」
そして「ブレードランナー」と続きSFにとどまらず松田優作の遺作となった「ブラック・レイン」「ハンニバル」なども手掛けている監督です。

個人的には黒澤明監督に似たこだわりを持つ映像美がとても好きです。

「エイリアン」は1979年に公開された映画で、2122年の宇宙船を舞台としたSFホラーの古典的作品です。
(この映画以降、本来「異邦人」や「よそ者」といった一般名詞だったalienという単語が「人間に危害を及ぼす異星人」という意味の固有名詞となった感があります。)

2017年までシリーズ作が出ている大作ですが、先日、20年ぶりに1作目のエイリアンを観てみました。

デザインはいうまでもありませんが、映像やストーリーについても、20世紀を10年以上経た今でも全く古さを感じさせず20歳のときに劇場で感じた怖さそのままで感動モノです。

しかし、今みると滑稽ともいえる場面が出てきます
それは、宇宙船のコンピュータールームでクルーがコンピューターを操作をする映像です。

ここに搭載されているコンピューターは、乗組員の質問にAIが回答するという役割で登場するのですが、2122年が舞台であるにもかかわらず、

「乗組員がキーボードで文字の質問を打ち込んでコンピューターが文字で答えを返す」

という設定になっているのです。

今で言えば「ヘイ、SIRI、近くのお蕎麦屋さんを教えて」と宇宙でタイピングしている感じです。

リドリー・スコットは自らが選ぶSF映画のランキングで「2001年宇宙の旅」を1位にあげており、次回作もブレードランナーであることからも、2122年に使われるコンピューターが、まさか文字情報のやりとりになるなどとは考えていなかったのは明白です。

では、なぜこの映像表現を用いたのでしょうか。

理解されなければ娯楽にならない

コンピューターの歴史を紐解くと、映画が公開された1979年といえば家庭やオフィスにパーソナルコンピューターを導入する人がボチボチ出始める頃でした。

それまで、欧米圏ではタイプライター、日本では手書きが主だった文化にかわって、キーボードで入力してコンピューターが演算をして結果をディスプレイに表示するといった今では当たり前の機能もごく限られた人しか使っていなかったのです。

しかし、近い将来、皆が日常的にコンピューターを使う世の中になるであろうことは予想がついていたと思います。

とはいえ、現在のようにアイコンを操作したり音声情報を駆使してコンピューターを操作するといった概念を一般の人が持てていたわけもありません

事実、私自身も当時は「滑稽」はおろかコンピューターに高速で質問を打ち込むシガニー・ウィーバー演じるリプリー航海士に憧れを持っていました。

それが、30余年を経てみると滑稽に写ってしまうのですが、リドリー・スコットはSF的にはそれが滑稽であることを承知の上でこの演出をしたと私は考えています。

というのは、

「SFは出来得る限り未来を的確に描写する」ことも大切ですが、それ以上に

「鑑賞者が理解できる」

ことが映画を楽しむ上で最も重要だからです。

たとえば、スコット監督がスマホの出現を予期していたとしても1979年にそれを表現してしまったら当時の観ている人は出演者が何をしているのかわかりません

なので、「1979年当時の人が思い描いているコンピューター」を2122年のコンピューターとして登場させる必要があるのです。

上の人が下の人に伝えるコツ

このSF制作の仕組みは私達に重要なことを教えてくれます。

それは、

「上司や先生にような専門性を持った人が部下や生徒に説明をするときには、下の者が理解できる方法で説明をする」

ということです。

いってみれば当たり前のことなのですが、これを実行している指導者は実際には極めて少ないといえます。

「専門用語を使ってより専門的なことを説明をする」
「初心者には省けないプロセスをとばして上の者が結果だけ提示して行動を促す」

よく見受けられる光景かと思います。
これでは、「体験のない未来を全く理解できない材料を使って作ったSF作品」になってしまいます。

新年度も始まりましたが、これを繰り返していては下の者のモチベーションは上がらずストレスばかりが募っていくことになってしまいます。

経験の少ないものは学ぶ姿勢を維持する工夫は大切なのはもちろんですが、指導的立場にある人は

「初心者がわかることばで分からせたいことを伝える」

ということを心がけることがその学びを助けます。

まとめ

  • 遠い未来を描くSF作品も現代の人が理解できる素材で作られている。
  • 理解できないことばで理解すべきことを伝えても伝わらない。
RELATED POST