内山の記事

昭和の漫画大好き男が選ぶ最終回が激烈だった漫画2選 ※ネタバレあり

みなさんこんにちは。
内山です。

私は、物心ついたときから漫画少年でした。
それから50数年間、
近くに漫画を欠かしたことがありません。
どの時代も人々に影響を及ぼす漫画はありますが、
今回は、最終回が激烈だった昭和の漫画をとりあえず2つご紹介します。
※ネタバレあり

真っ白い灰になった【あしたのジョー(ちばてつや)】

原作は、昭和では最も著名な高森朝雄(梶原一騎)です。
1967年~1973年に少年マガジンに連載され、
単行本は全20巻です。

手のつけられない不良少年だった矢吹丈が、
ドヤ街でボクシングトレーナーの丹下段平に拾われて、
少年院からボクシングを始め、
世界チャンピオンに挑むまでの物語です。
序盤のハイライトである力石徹との死闘は、
社会現象を惹き起こしました
ジョーとの試合後、力石は死亡してしまうのですが、
架空の人物であるにもかかわらず、
葬儀が行われました。

ジョーは強敵を次々と倒していきますが、
世界戦チャンピオンのホセ・メンドーサに挑戦するときには
すでにパンチドランカーとしての症状が出始めていました。
ジョーはそれを承知でチャンピオン相手に
無謀ともいえる玉砕戦を挑むのです。

コンピューターつきファイティングマシンと異名を取る
ホセは、序盤は優勢に運びますが、
ジョーの野獣的なファイトに苦しめられ、
最後はジョーが優勢のまま判定にもつれこみます。

当時、終戦後の混乱から高度成長に移行し、
それも落ち着いて、若者の生き方がが
「攻め」から「守り」に入って、
覇気のない時代といわれていました。
「無気力・無関心・無責任」の三無主義
「しらけ世代」など呼ばれたりしていたのです。
(その世代の人が今や実年世代になり
「これだからゆとり世代は困る」とか
いい出すんですけどね…。)
この漫画は、まさにその若者たちに
活を入れることになります。

ジョーは、物語中で「なぜ拳闘を続けるのか」という
問いに以下のように答えています。

「そこいらのれんじゅうみたいにぶすぶすと
くすぶりながら不完全燃焼しているんじゃない。
ほんのしゅんかんにせよまぶしいほどまっかに
燃あがるんだ。
そしてあとにはまっ白な灰だけが残る。
燃えかすなんか残りゃしない。
そんな充実感は拳闘をやる前にはなかったよ

ホセとのタイトルマッチでジョーは善戦むなしく
敗れてしまいますが、
「真っ白に燃えつきた、真っ白な灰に…」という
伝説のひとことを残すのです。

そして、完の文字とともに1ページに描かれた
有名なジョーの姿で幕を閉じます。

「ジョーは生きてるのか死んでるのか」という
疑問が囁かれましたが、それよりも
まっ白な灰になったことが重要なのです。

漫画の世界では、主人公はあまり苦労もせずに
結果を出していくことが多いのですが、
あしたのジョーは、試合そのものよりも
その背景となる描写が秀逸です。

大どんでん返し【マーズ(横山光輝)】

1976年~1977年に少年チャンピオンに連載され、
単行本は5巻です。

横山光輝といえば、漫画の黎明期から
鉄人28号、魔法使いサリー、コメットさん、
バビル2世、あばれ天童などの名作を次々と発表し、
後年は水滸伝、三国志を始めとする歴史物を
ライフワークにしていた大作家です。

横山作品のラストは子ども心にも納得のいく
作品が多いのですが、このマーズだけは別物です。
(作品自体はアニメの「六神合体ゴッドマーズ」が
有名になりましたが、こちらは原作とは全く違います。)

はるか昔(古代文明の時代)に地球を訪れた異星人が、
地球人のあまりに好戦的で残虐的な性質に触れて、
主人公のマーズ少年と地球を一瞬で破壊する
ロボットのガイアーを海底深く眠らせます。
また、その監視役として6人の監視者と
彼らが操るロボットの六神体もセットします。

マーズを数百年後(21世紀後半)に目覚めさせ、
そのときに地球人が、宇宙にとって危険な
存在であった場合、六神体が大陸規模で破壊するか、
ガイアーが地球ごと破壊するかを
決断することになっていました

しかし、火山活動の影響で予定より100年早く
マーズが目覚めてしまいます。
また、マーズはその影響で記憶を失っていて、
使命を思い出せず地球人に救助されることになります。

一方でマーズが目覚めると同時に、
地球人の兵器の強さを測る
ロボットのタイタンが動き出し、
地球人が核兵器を用いてタイタンを破壊したことから、
ガイアーによって地球を無きものにするという決定
くだされます。

マーズが正常に動いていれば、
この時点で地球は宇宙の藻屑となっているところでしたが、
救出されて地球人とともに生活をしているマーズは、
その決断ができません。
ついには地球人の味方となって六神体と戦う決意をするのです。
一方、六神体からするとマーズが死亡した場合でも
ガイアーは爆発をするので、マーズを始末しようと動き始め、
マーズ対六神体の死闘が始まります。
(スフィンクスが実は六神体のうちのひとつだったりして
見どころがあります。)

結果的にマーズは六神体と監視者6人のすべてを
倒すことになり、一件落着とおもいきや…。
最後で大どんでん返しが起こります。

人類はマーズに地球の未来を託すのですが、
被害にあった人々が恨みをマーズに向け始め
暴行を加えるのです。
それを見た傭兵が暴行者を次々と撃ち殺します。
マーズはここで使命を思い出し、
「ドウシテボクハコノ動物をマモロウトシタ」
とつぶやき、ガイアーを爆発させてしまいます。

六神体との闘いを終えて、
最後のページまでわずか4ページ
です。

この結末をみた当時の子ども達のショックは
はかりしれません。

地球を外からみるとどうなっているのか
人間ってそんなに悪いのか
どうしたらよかったの

子ども達は子ども達なりに
何らかの答えを導き出さなくてはなりません。

今読み返してみても、作者自身の憤りとジレンマが
あちらこちらに表れています。
主要な登場人物も次々と死んでいきます。
追い詰められた人たちの人間模様も
主観的、客観的にこれでもかと描かれています。

時代背景としては、米ソの冷戦等があり、
人類は危機的状況にあるのではないかという
世相であったことは間違いありませんが、
「少年誌で小学生にそれをつきつけるの」という
衝撃の結末でした。

まとめ

昭和は令和と比べればコンプライアンス的にも
子どもの扱い的にも緩い時代でした。
おつかいで酒や煙草を小学生が買いに行ったり
してた時代です。

そんな背景もあり、当時の漫画は少年誌といえども
ショッキングなものが多かったのは事実です。
しかし、黎明期から漫画界を支えてきている
作者のみなさんは、それをも乗り越えて
子ども達の心に響く名作を世に送り出してくれています。

ひとまわりして、その時代の漫画に
触れてみられてはいかがでしょうか。

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